季節が変わるときの帳面
季節が移り変わるころになると、厨房の帳面は少しずつ書き換えられ、並ぶ名前が入れ替わっていきます。前の季節に頼っていた材料が静かに姿を消し、代わりに新しい顔ぶれが並ぶという時期がやってきます。
その切り替えは一度に起こるのではなく、少しずつ重なり合いながら進んでいくものだと言えます。両方が同時に手に入る短い時期こそが、次の献立を試してみるのにちょうどよい時間になってくれます。
同じ名前の材料であっても、季節が変われば持ち味が動くため、扱い方も合わせていくことになります。火の当て方や合わせるものをほんの少し変えるだけで、その時期らしい姿へと自然に近づいていきます。
書き換えた帳面は、翌年の同じ時期にあらためて読み返してみると、そのまま手引きとして働いてくれます。去年どこで迷ったのかが書き残されていれば、今年は一歩先のところから始められることになります。
仕入れ先とのやり取り
仕入れ先とのやり取りは、季節の変わり目にこそ濃くなり、交わす言葉の数もふだんより増えていきます。いま何がよいのかを教えてもらえるような関係は、日ごろの積み重ねの上に少しずつ育っていくものです。
届いたものを実際に見て、その日の献立を決め直すという場面も、季節の変わり目にはよく起こります。予定を守ることよりも、目の前に届いたものに合わせるほうが結局はよい結果になることが多いようです。
季節ごとの動きを記録に残しておくと、翌年の仕入れの見立てがずいぶん立てやすくなっていきます。どの時期に何がよかったのかという蓄えは、年を追うごとにその店にとっての確かな財産になっていきます。
専門学校で学んだ資格に向けた知識は、素材の性質を読み解こうとするときの土台になってくれます。料理人として季節と長く付き合っていくうえで、その土台があるかどうかは大きな違いになってきます。
まとめ
季節ごとの仕入れは、帳面を書き換えるという静かな作業から始まり、やがて日々の献立へと形を変えていきます。季節の移り変わりに合わせて手を動かし続けるこの営みは、年を重ねるごとに少しずつ厚みを増していくものです。
同じ季節は二度と同じようには巡ってこないため、毎年の記録がそのまま次の年の確かな助けになってくれます。積み上げてきた帳面を静かにめくる時間には、過ぎ去った年月がそのまま並んでいるような落ち着きが漂っています。
季節と向き合い続けるというこの仕事の形は、急がずに時を重ねていける人にこそ向いているように思われます。書き換えるたびに少しずつ増えていく手応えが、この仕事を長く続けるための支えになっているのだと感じられます。