覚えた味は言葉とともに残る
料理人にとって、これまでに口にしてきた味の蓄えというものは、そのまま仕事の元手になっていきます。ところが強い印象を受けた味ほど、時間が経つにつれてその輪郭がぼやけていってしまうものです。
残る味と消えていく味との違いは、そのときに言葉として残せたかどうかにあるように思われます。甘さの出方や後に残る香りを言い表しておくと、記憶が後から引き出しやすい形になってくれます。
言葉にするという作業は、味を分解して並べ直すことでもあり、そのまま組み立ての練習にもなります。何が効いているのかを掴めていれば、自分の一皿にもそのまま生かせるようになっていくものです。
書き留めるときには、うまいかどうかの判定よりも、どう感じたのかを残すほうが後々役に立ちます。判定は時とともに移り変わっていきますが、感じ方の記録は後から読んでも意味を持ち続けてくれます。
記憶を蓄えるための習慣
記憶を蓄えるための習慣として、季節ごとに同じ食材を口にしておくという方法が知られています。同じものを毎年続けて味わっていると、その年ごとの違いにも気づけるようになっていくものです。
人と一緒に食べて感じたことを言い合ってみると、自分だけでは出てこない言葉に出会うことができます。他人の言葉を借りてみることで、自分の感じ方の輪郭がはっきりしてくることも少なくありません。
自分が作った一皿についても、同じように言葉を残しておくと、蓄えがいっそう厚くなっていきます。狙いと結果とのずれを書き残しておけば、次に作るときの手がかりがそのまま残ることになります。
専門学校で学んだ資格に向けた知識は、味を言葉にしていくときの確かな支えになってくれるものです。素材の性質を知っていると、その味がどう成り立っているのかを筋道立てて説明できるようになります。
まとめ
味の記憶は、感じたその場で言葉にできた分だけ残っていくというのが、積み重ねの末にたどり着いた結論です。舌の良し悪しという話ではなく、記憶を残すための手立てを持っているかどうかの違いなのだろうと考えられます。
日々の習慣として最も続けやすいのは、短くても構わないので必ず書き残すという形に定めておくことだと思われます。長い記述を目指してしまうとやがて続かなくなってしまい、せっかくの蓄えが途切れてしまうことになりかねません。
蓄えてきた味の記憶は、まったく新しい一皿を考えようとするときに、思いがけない形で助けてくれることになります。言葉として確かに残っているからこそ、本当に必要になったときにすぐ取り出せるのだと感じられるようになります。料理人の専門学校のことならこちら